イベントや商品、Webサイトの広告において、デザインってとっても大事です。デザイン次第で売り上げが大きく変わるので、手を抜けない部分と言えます。
だからこそ、広告デザインに力を入れたいのですが、何も経験がないと正直どうやんの? 感がぬぐえません。そりゃそうです。教えてもらってないし。
では、ここで質問です。商品の広告デザイン、Webサイトのヘッダ、バナーデザインなどを作る場合に一番大切なことはなんでしょうか。
フォントの選び方? 全体の色味? クールなレイアウト? それとも訴求する写真?
いっぱい考慮することがありますよね。ですが、写真の明るさがどうの、フォントはモリサワ持ってないととかそういうの。不正解です。あ、Photoshopが必要? 違います。
誤解を恐れずに言えばデザインはどうでもいいです。どうでもいいと言うか、後に考えることです。
広告デザインで一番先に考えなきゃいけないこと。それはキャッチコピーとタグラインです。
今回は、キャッチコピーとタグラインを考慮しながら、弊社のヘッダーデザインを作り直してみます。
キャッチコピーとは? タグラインとは?
制作に入る前に、まずキャッチコピーとタグラインの存在意義を整理してみましょう。
スシローに見る タグラインとは
キャッチコピーはなんとなく分かるけど、タグラインってなんぞやって言う方、多いと思います。
タグラインとは、一言で言ってしまうと「商品の価値の定義づけ」です。要は、この商品はこう言うところが他と違って良いですよって一発で分からせる部分です。
例を見てみましょう。
「うまいすしを、腹一杯。」
↑はスシローのタグラインです。このタグラインは
- 寿司って普通高い
- けどスシローは安いから腹一杯食べれるよ
- しかもうまいよ
と言う、スシローが他と違うところを端的に表現したものと言えます。この一文だけで、あなたがスシローに行くべき理由ができてしまう。タグラインがスシローという商品の「価値の定義づけ」をしているわけです。
これが、
「最高のお寿司を。贅沢に。」
とかだったら、客層も変わるし、スシロー側が出すネタも価格も変えないといけないすよね。そう、タグラインだけで全く逆のことになってしまう。つまり、タグラインで重要なのは、商品が狙うターゲットに対して、その商品が何を解決するかを表すということになります。
スシローのタグラインがいかに優れているかは、下記のサイトでも紹介されています。参考にしてみてください。
では、キャッチコピーって?
じゃあキャッチコピーはなんなのさ? となると思いますが、ここは僕の愛読書「ここらで広告コピーの本当の話をします」から引用を。
「 キャッチフレーズは文字通りターゲットの関心を「つかむ」役割を担いますが、ポスターであればビジュアルで、CMであれば映像や音でも「つかむ」ことはできます。
広告コピーと言えばキャッチフレーズのこと、と思っている人も多いようですが、それは誤解です。確かにキャッチフレーズは広告の最も目立つ場所に君臨する、 広告の華と言えましょう。タグラインは商品名の周囲にちょこっと書いてあるだけの地味〜な存在です。しかし、キャッチフレーズはどんどん消費されてしまいます。つかむためには鮮度が大事だからです。」
キャッチコピーは「つかむ」ことが重要です。「あ、これ、自分に関係あることかも」と、つい思っちゃうようなキャッチコピーがいいコピーだと言えます。
ススキノを歩いたり、楽天市場なんかを見ていると思いますが、この広告過多時代。あらゆる方法で広告はユーザーの目を引こうとしてきます。そのため、他と差別化のないキャッチコピー(引用文献にも書いてある通り、必ずしもテキストとは限らない)だと、いくら秀逸なタグラインを用意しても、そもそも見られません。
タグラインとキャッチコピーを考えてアールズのWebサイトヘッダを直してみる
よっしゃ。じゃあ早速弊社のWebサイトヘッダを直してみます。まずはPhotoshopを立ち上げて〜って、おバカ俺。まだ早い。
スシローのタグラインをもう一度見てみましょう。
「うまいすしを、腹一杯。」
これは、スシローが「寿司だけど安い」「安いから腹一杯食べれる、そしてうまい」という競合との差別化ポイントを持っているからこそ生まれたタグラインでした。つまり競合との差別化ポイントが明確でないと、何もできないのです。ちなみに競合との差別化ポイントをUSP(Unique Selling Proposition)と言います。
なので、まず最初に弊社のUSPを考えていきます。
アールズのUSP(競合との差別化ポイント)を考える
アールズの事業の軸と強みは下記です。
・Webアプリケーション制作
→ ツール系の制作を得意としている。TwitterやAmazonなどの外部API、スクレイピングなどを使ったサイト連携の知見があり、外部サイトとデータを連携させるのが大得意。
・Webサイト制作/コンサル
→ デザインが良いのはもちろん。集客するための戦略立案から行い、サイトから人を集めるためのノウハウに優れている。
今回は「Webサイト制作/コンサル」に絞ってタグライン、キャッチコピー、ヘッダデザインを作ってみます。
ちなみにこれを踏まえた上で、現状のヘッダーデザインを見てみます。
パッと見無難ですが、ターゲットに向けて明確にUSPを示せているか、ターゲットを惹きつけるキャッチコピーができているかは微妙ですね。早速直していきましょう。
アールズのWeb制作のタグラインを考える
・Webサイト制作/コンサル
-> デザインが良いのはもちろん。集客するための戦略立案から行い、サイトから人を集めるためのノウハウに優れている。
うちのWebサイト制作における強みは↑でした。
正直なところ、デザインはどの会社さんであっても普通の料金で依頼すればちゃんとしたデザインになると思います。でもサイト制作と言うのは、
「自分の狙ったターゲット」
に
「サイトに来てもらい」
「狙ったことをしてもらう(商品購入/サービス契約/問い合わせ/シェアなど)」
のが目的となります。デザインだけでは片手落ちなのです。
もちろん他社様においても、ここを分かった上で、制作をしていると思われますが、「札幌 ホームページ制作」と言う検索ワードで調べたところ、この部分を明確にヘッダで推しているサイトはあまりありませんでした。推していない=顧客からは少なくともヘッダデザイン上では認知されていないのと同様です。
つまり、ここをヘッダデザイン上で推していくことは他の制作会社様との明確な差別化になります。
と言うことで、スシローが「安くてうまい寿司をめっちゃ食べれる」と言うところをフィーチャーしてタグラインを作ったのと同じく、
アールズも
「狙ったターゲットが集まるサイトを作れるよ!」
と言う点を推してタグラインを作っていきます。
想定するターゲットとしては、
「自社サイトを作っては見たものの、アクセス0、問い合わせ0で虚無感を感じている」
「自社サイトが重要なことは分かっているが、メリットがイメージできない」
「中小企業の社長やWebサイト担当者」
あたりです。
この層に響きつつ、自社の強みを明確に説明するタグラインをいくつか考えてみました。以下の通りです。
- 「24時間365日働く営業マン。ホームページで顧客を集める。」
- 「アクセス0でない。人が訪れたくなるホームページを作りませんか。」
普通過ぎますか? いえ、タグラインは定義づけなのでこれでいいと思います。
アールズが「ターゲットが集まるサイトを作れる」と言うことが明確に分かればいいので、ターゲットがわかる言葉でシンプルに行くほうが良いと思います。
言葉の選び方や、工夫の労力はむしろキャッチコピーの方で威力を発揮します。
ちなみにここで「SEO」とか「CVR」がどうのこうのとか、専門用語は不要だと思います。なぜなら、専門用語を使うと、
「自社サイトが重要なことは分かっているが、メリットがイメージできない」
↑の層の離脱を招くためです。
比較的専門外の方が多いと思われる上記ターゲットに向けて、「SEO」などの単語が響く可能性は低いと思われます。ちょっと問い合わせたら、技術屋から難しい言葉でざーって説明されたら萎えますよね? そんな感じです。
また、「ホームページ」は「Webページ」または「Webサイト」と表記するのが正しいのですが、そこも敢えてそのままにしています。専門外の方からすると「ホームページ」と言う単語の方が馴染みが深いためです。
想定ターゲットに合わせて、タグラインはシンプルに書くことが重要です。
(もちろん、ターゲットによっては専門用語が響く場合がありますので、専門用語を使うなと言うことでは決してありません)
アールズのWeb制作のキャッチコピーを考える
キャッチコピーは人を「キャッチ」するコピーです。このコピーは、テキストで表してもいいし、「キャッチ」できるのであれば、画像や動画、音声で代替しても構わないと思います。CMなんかは動画そのものの威力で「キャッチ」する場面も多いですよね?
テキストだろうと動画だろうと、「キャッチ」するために重要なことは、「自分と関係のあること」と思わせることです。
僕はメイクをしないので、化粧品の広告がいくら並んでいても目に留まることはないでしょう。しかし、女性であれば化粧品の広告に目が留まりますよね? もっと言えば、「いつも目元のクマに悩んでいる」「女性」であれば、「99%の人がクマが消えた」化粧品やサプリの広告があれば思わず手を止めるでしょう。
基本はこれと同じことをすれば良いのです。(クマが消えないのにクマが消えたと言って「キャッチ」するのは違法に問われる可能性がありますのでご注意を(当たり前))
まずは兎にも角にもターゲットです。アールズのターゲットは下記でした。
「自社サイトを作っては見たものの、アクセス0、問い合わせ0で虚無感を感じている」
「自社サイトが重要なことは分かっているが、メリットがイメージできない」
「中小企業の社長やWebサイト担当者」
ここを「キャッチ」するためにはどうするか。
基本は、不満型のキャッチで煽るか、幸福型のキャッチで煽るかの2パターンです。
不満型のキャッチコピー
不満型では、現状ユーザーが感じている不満点を、代弁することでキャッチします。
例えば、有名な「うわっ…私の年収、低すぎ…」と言うキャッチコピーは不満型のキャッチコピーとなります。
「年収低いなあ」
「俺ってもっと評価されてもいいんだよなー」
と言う層に向けて、この広告はかなり訴求します。
で、タグラインとして
「無料5分で、適正年収やビジネス基礎能力が分かる「市場価値診断テスト」。受けた人は40万人を突破!結果もすぐ分かると大人気だ。」
と、具体的にリンク先で何ができるかを説明し、転職サイトへのリンクへ導く形。
例えば、これが「市場価値診断テスト実施中!」とか言うキャッチコピーだったら、全くクリックされなかったと思います。
これが不満型のコピーの力です。ターゲットが抱えている不満を考え抜き、不満を代弁する形で共感を得て「キャッチ」します。
ではアールズの不満型のキャッチコピーを考えてみます。こんな感じにしました。
再考の余地がまだまだありますが、まずはこんな感じでしょうか。タグラインも少し変えました。
「IT IT叫ばれている昨今、電話営業に頼りっきりでなんとなく前時代的だなあ。何かやりてえなあ」
と不満を持っている営業部長や社長に向けて書いています。そう言う方に、この短いコピーを見せ、
「そうそう! 俺もそう思ってたんだよ!」
と思わせれば、続いてタグラインを読んでくれます。仕事概要ページや、Blogページなどもクリックしてくれるかもしれません。つまり、仕事につながる可能性が高くなるわけです。
幸福型のキャッチコピー
続いて、幸福型のキャッチコピーについても考えてみましょう。
幸福型のキャッチコピーとは、「そのサービスや商品を導入したことで幸せになった自分」を想起させることで、「キャッチ」します。具体例としては、タワレコの「NO MUSIC NO LIFE」でしょうか。
トップ – NO MUSIC NO LIFE. – TOWER RECORDS ONLINE
この一言で、音楽に囲まれて生活することの喜び感がかなり想起されます。
不満型の場合と同じく、
「あー、いいねー。俺もそう思ってるわー。そう言う生活したいわー」
と正の共感を呼ぶのがポイントです。
では僕もやってみます。
うちにサイト制作を依頼したことで、通常の営業プラス自社サイトからも仕事の依頼が来るような幸福状況。これを想起させるワードでキャッチコピーとタグラインを当てはめてみました。
昨今、働き方改革が話題になっており、社員を不当にめちゃくちゃ働かせて利益を得ると言う手法は過去のものになりつつあります。当然、中小の社長や幹部層はその風潮に合わせて日々業務を最適化している(またはしようとしている)と思います。そこに「24時間働かせる」と言う時代と真逆なことをしてますよ? と煽れば、「おっ」と目に止まるんではないでしょうか。
キャッチした後は、タグラインで答え合わせ的に、ホームページを作れば実現できますよ、とシメて、LPや仕事概要などにリンクさせれば、十分反応が得られると思います。
(ちなみに営業しなくても自動的に仕事が来るからホームページ制作は最高! みたいな捉え方をされるケースが多いのですが、ホームページも作ったら終わりではなく、日々のコンテンツの拡充が必須ですので、その辺お間違えなきよう。。。)
キャッチコピーはセンスだけじゃない
どうでしたか? 今回の場合は、ぶっちゃけUSPとタグラインの深掘りがまだまだ甘いので、普通のことを言っているに過ぎないのですが、少しだけUSPを考え、キャッチコピーと組み合わせることで、広告にストーリーと説得力が生まれました。
最後に、現状のヘッダと改良したヘッダ見比べてみます。
突貫で作ったとは言えデザイン的にはダメダメですね(笑)あと、サイトの顔としてはどうなの? 感もあります。もう少し改良しなければ。。。
ただ、少なくとも現状のヘッダよりはターゲットを意識したメッセージ性があり、サイトに訪れた人にとって意味のあるものとなったと思います。キャッチコピーって感覚とセンスでやるものだと思いきや、こんな風に綿密な戦略立ても重要だったんですね。
今回はWebサイト制作に関するヘッダだけでした。Webアプリケーション制作のヘッダについても後日、作っていきたいと思います。その様子も解説しますので、お楽しみに。
本日は以上! Webデザイナーの小久保でした!